宇野千晴 (名古屋学芸大学管理栄養学部)
近年、高齢化の進展に伴い、摂食嚥下障害を有する方が増加しており、嚥下調整食の重要性がますます高まっています。嚥下調整食とは、食物の硬さや付着性、凝集性などを調整し、誤嚥や窒息を防ぎながら、安全に食事を摂るための食事です。嚥下調整食は、誤嚥や窒息を予防しながら安全な経口摂取を支援するための食事ですが、その目的は安全性の確保だけではありません。嚥下障害を有する方では、食事摂取量の低下や低栄養、サルコペニア・フレイルを併発していることが多く、これらは嚥下機能の低下をさらに助長することが知られています。その結果、適切な栄養管理を行わなければ身体機能や生活機能の低下につながることがあります。そのため、嚥下調整食は「安全性」と「栄養摂取」の両立を目指した栄養療法として捉えることが重要です。
このような背景から、令和8年度診療報酬改定では、嚥下調整食が新たに特別食加算の対象として位置づけられました。これは、嚥下調整食が単なる食形態の調整ではなく、重要な栄養治療として評価されたことを意味しています。一方で、適切な嚥下調整食を提供しているだけで十分な支援ができているとは限りません。実際には、食形態を変更したことで食事量が減少したり、嗜好に合わず摂取が進まないことも少なくなく、適切な栄養評価が不可欠です。特に高齢者では、筋肉量や筋力の低下が進行していても体重変化として現れにくい場合があるため、身体機能や筋肉量を含めた包括的な栄養評価が重要であり、Global Leadership Initiative on Malnutrition (GLIM)基準などを活用した継続的な栄養モニタリングの必要性が示されています1)。また、近年のメタアナリシスでは、適切に調整された嚥下調整食は、エネルギーおよびたんぱく質摂取量の改善に寄与することが報告されています2)。食形態を調整するだけでは十分ではなく、栄養強化を行った嚥下調整食や栄養補助食品を活用しながら、栄養価と安全性の両立を図ることの重要性が示唆されています3)。
嚥下調整食において特に重要なのは、提供後の継続的な評価と見直しです。体重変化、食事摂取量、水分摂取状況、栄養状態、筋肉量などを定期的に確認し、適切な食形態や栄養量が維持されているかを評価する必要があります4)。
また、このような評価や支援は管理栄養士だけでなく、医師、言語聴覚士、歯科医師・歯科衛生士、看護師、リハビリテーション専門職など、多職種が連携して取り組むことが重要です。それぞれの専門的な視点から情報を共有し、食形態や栄養管理の方法を調整することで、より安全で効果的な食支援につながります。

図1. 嚥下障害患者のマネジメントサイクル
嚥下調整食は、安全に食べるための「手段」であって「目的」ではありません。本当に目指すべきゴールは、誤嚥を予防することだけではなく、安全に、おいしく、そして必要な栄養を十分に摂取し続けることです。そのためには、「嚥下調整食を提供しているか」ではなく、「その食事を患者さんが実際に食べられているか」「必要な栄養が確保できているか」という視点で継続的に評価することが重要です。摂取量の低下や体重減少を見逃さず、多職種と連携しながら食形態や栄養管理方法を適宜見直していくことが、十分な栄養摂取の確保と生活機能、QOL(生活の質)の維持・向上につながります。
参考文献
1)Ueshima J, et al. Assessment in Adult Patients with Dysphagia: A Scoping Review. Nutrients. 2021;13(3):778.
2)Chu YH, et al. Effectiveness of diet modification on dietary nutrient intake, aspiration, and fluid intake for adults with dysphagia: a meta-analysis of randomized controlled trials. J Nutr Health Aging.2025;29(4):100486.
3)Nuñez-Lara A, et al. Effect of a Large-Scale Production and Quality-Controlled Program for Texture-Modified Diets on Older Hospitalized Patients with Oropharyngeal Dysphagia. Nutrients. 2026;18(4):601.
4) Javorszky SM, et al. Combined systematic screening for malnutrition and dysphagia in hospitalized older adults: a scoping review. BMC Geriatr. 2024;24(1):445.


