見た目だけではわからない― 市販食品の「食べやすさ」をどう選ぶか ―

著者:園井みか(ノートルダム清心女子大学人間生活学部食品栄養学科)

身近な市販食品を、食支援に生かす

 スーパーやコンビニエンスストアには、だし巻き卵、煮魚、ハンバーグなど、温めるだけで食べられるさまざまな惣菜が並んでいます。調理の負担を減らせる市販食品は、一人暮らしの高齢者や、毎日の食事を準備する家族にとっても身近な存在です。一方、摂食嚥下機能が低下すると、『どの商品なら食べられるのか』『軟らかそうに見えるが、本当に大丈夫なのか』と迷うことがあります。病院や施設では嚥下機能に応じた食事が提供されますが、退院して生活の場に戻った途端、食品を選ぶための情報は少なくなります。

「軟らかそう」と「食べやすい」は同じではない

 食品の食べやすさには、硬さだけでなく、口やのどに付きやすいかを表す付着性、口の中でまとまりやすいかに関係する凝集性など、複数の物性が関わります。しかし、市販食品のパッケージには、栄養成分表示はあっても、こうした食べやすさの情報はほとんど示されていません。そのため、商品名や見た目、これまでの経験を手がかりに選ばざるを得ないのが現状です。岡山県内のスーパーマーケットで購入した市販主菜8品目について、硬さ、付着性、凝集性を測定しました。その結果、最も軟らかかった卵豆腐と、最も硬かった筑前煮に含まれる蓮根では、硬さに約30倍の差がありました。また、同じ卵豆腐やだし巻き卵でもメーカーによって物性が異なり、だし巻き卵では電子レンジの出力や加熱後の時間によっても物性が変化しました。つまり、『卵料理だから軟らかい』『煮物だから食べやすい』と、食品名だけで判断することには限界があります。

物性値だけで「安全」とは決められない

 ここで注意したいのは、機器で測定した物性値だけで、個々の人にとって安全に食べられるかを決めることはできないという点です。食べる力は一人ひとり異なり、同じ人でも体調や姿勢、ひと口量などによって変化します。今回の結果も、特定の地域で購入した限られた製品を測定したものであり、すべての市販食品に当てはまるわけではありません。物性情報は、専門職による嚥下機能の評価や、実際の摂取状況の確認に代わるものではなく、食品選択を考える際の一つの手がかりとして用いる必要があります。

「管理する食事」から「選択できる食事」へ

 それでも、市販食品の物性情報を少しずつ蓄積し、患者本人や家族、医療・介護の専門職が共有できるようになれば、生活の場で選べる食品は増えていくと考えます。身近な店で購入できる食品の中から、自分の食べる力や好みに合うものを選べれば、家族と同じ食卓を囲むことや、外出先で食事を楽しむことにもつながります。

 摂食嚥下障害のある方への食支援では、安全性の確保が大前提です。しかし、支援する側が安全な食事を一方的に決めるだけでなく、本人が『何を食べたいか』を考え、その人に合う選択肢を一緒に探すことも大切です。市販食品の物性を明らかにする研究を、食事を管理するためだけではなく、食べる人の選択を支えるための情報へとつなげていきたいと考えています。

参考文献

1)園井みか.市販主菜の物性評価と嚥下適合性に関する特徴の検討.日摂食嚥下リハ会誌.2026;30(2):135–142.

2)日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食委員会.日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021.日摂食嚥下リハ会誌.2021;25:135–149.

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