江頭文江(地域栄養ケアPEACH厚木)
日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021のなかに、「離水」という言葉が使用され、多くの方が「離水」という言葉を知りました。「離水」とは、本来食品に含まれている水分が分離してくることをいいます。特に、ゼリーやペースト状の嚥下調整食でみられます。
離水には、表面離水と内部離水があります。表面離水とは、ゼリーのカップを開けた時にほんの少しこぼれる水分、内部離水は、ゼリーを食べている途中で水分が分離して出てくる現象です。お粥を食べていると水分が分離してくる現象、これは唾液のアミラーゼによる分解であり内部離水です。
一方で、「ゼラチンゼリーがやわらかくなる・溶ける」、「ムースを温めるとやわらかくなる」これは、温度による「溶解」で離水ではありません。食品の物性がやわらかくなる、という現象をみたときに、離水なのか、溶解なのか、で、その後の対応が変わってきます。「離水」と「溶解」を正しく理解しなくてはなりません。
離水は、以下のようなときに起きやすくなります
- ゲル化剤の濃度が低く、ゲル強度が低いとき
- 砂糖等の量が少ない
- 加熱や冷却時の変化(攪拌等)によって
- ゼリーやペースト状の嚥下調整食の長時間放置したとき
- 冷凍し自然解凍した後のゼリーのように食品の構造が不安定なとき

では、離水を防ぐには、どのようなことに注意したらよいのでしょうか
まずは、ゲル強度を意識して、適切なゲル化剤、とろみ調整食品の選択をすることです。嚥下調整食に関連したゲル化剤には、離水に配慮したゲル化剤が多く市販されています。一方で、ゼリー製品のなかには離水してしまうものもみられます。
果汁をゲル化するときに、砂糖などを入れることでより物性は安定し離水はしにくくなります。しかし、嚥下調整食はすべて甘いゼリーというわけではないため、すべてのゼリーに砂糖を入れるわけにはいきません。
ゼリーの加熱・冷却は、適切な温度管理と保存時間とすることです。ゲル強度が安定するまでにはある程度時間が必要です。冷却環境(ブラストチラー、冷蔵庫等)にもより、冷却時間が異なります。
さらに、長時間放置することで離水につながるため、食事として提供後食べ始めるまで常温で放置されることなく、提供後の保管方法についても配慮が必要です。
冷凍可能なゲル化剤も市販されています。冷凍することで、食品の構造は壊れますが、再加熱でしっかりと温度を上げることで、元の物性に戻るものがあります。製品特性を理解し、調整していきます。
「離水」は、むせや誤嚥のもとにもなりうる現象です。嚥下調整食の調理時だけでなく、食事提供(配膳)時、食事介助時など、多職種で離水について情報共有しておくことで、より安全に食べる環境を整えることができます。