栄養強化嚥下調整食導入事例(東名厚木病院)

社会医療法人社団 三思会 東名厚木病院

著者:東村智巳、江頭文江

嚥下調整食提供数(1日あたり)

R7年9月の実績 73.9食/565.3食(13.1%)
≦内訳≧
 ソフト食 16.9食
 ムース食 15.1食
 ブレンダー食 8.6食
 ミキサー食 25.8食
 ゼリー食 7.5食

はじめに

・当院の特徴のひとつとして、看護師・歯科衛生士・言語聴覚士で構成される摂食嚥下療法科があり、患者の入院と同時に、早期経口摂取、早期退院を目指しています。管理栄養士は摂食嚥下チームの一員として日々の臨床業務にも携わり、各病棟担当の管理栄養士とも連携をとっています。

・当院の給食業務は全面委託であり、嚥下調整食は学会分類2021に対応し提供してきましたが、日々の物性について使用食材の制限や調理後の物性のばらつき、栄養強化には料理ではなくONSを追加する等の課題がありました。そこで、2025年10月の給食業務委託の業者変更に伴い、約束食事箋の改訂ともに、嚥下調整食基準の見直しを行いました。

栄養強化嚥下調整食導入までの体制作り

(開設前の取り組み)

・当院で提供されている嚥下調整食(開設前)について試食をし、課題を共有しました。
・使用食材が変更になるためその食品の確認と、肉や魚の素材の物性について試食会を開催し、確認しました。
・病院管理栄養士と委託業者の当院配属予定者を中心に、嚥下調整食の調理実習を行い、とろみ調整食品の使用法、ゲル化剤を使ったムース食の調理、加水ゼロ式調理法等について学習しました。
・院内での摂食嚥下チームとの議論や試食会により、コード2,3,4の使用食材、料理の物性について、共有、基準の改訂作業を進めました。

どのように体制を整えたか(調理員の研修や人員配置、器具など)

①献立の調整

・献立作成の段階で、嚥下調整食の献立展開を共有し、オペレーションをイメージしながら修正をしていきました。
・加水ゼロ式調理法では、調理実習後、どの物性の粥ゼリーをつなぎに使うのか、どのくらいの量を添加するのか等調理師が試作をし、病院管理栄養士と検討しながら、メニューによって添加量を決めていきました。
・全粥や粥ゼリーは、従来から添加していたMCTオイルに加え、粉飴も添加することを考案し、その配合などについて試作・試食・検討しました。
・基本のゲル化剤を統一し、同じオペレーションでムース状に固めることができるようにしました。

②厨房オペレーション

・朝食は、主に常菜等はニュークックチルを導入、嚥下調整食は市販の介護食品を活用し、主食と味噌汁等は当日調理とし、朝の出勤人数を最小限にしました。
・開設直後は、病院栄養士も実際に厨房に入り、オペレーションの確認をしました。
・効率が悪い流れはその都度検討・修正し、給食関連の帳票類も厨房の現場が作業しやすいように修正しました。
・全粥は、安定した物性となるように、「スベラカーゼお粥ゼリーの素」を活用し、その後軟飯から作るオペレーションに変更しました。

③開設後のモニタリング

・平日に昼食の試食を行い、物性や味の確認をしています。この試食は病院管理栄養士だけでなく、給食委託業社の管理栄養士・栄養士と共に行っています。
・さらに、週1回摂食嚥下チームでの試食会を実施し課題の共有と修正のモニタリングをしています。
・ミールラウンドでは、実際の摂食状況を把握し、多職種と共に評価しフィードバックしています。

工夫点

・主食の全粥や粥ゼリーは、MCTオイルだけでなく、粉飴を添加し、全粥や粥ゼリーの量を増やさず、エネルギーアップをしました。
・コード2に対応した食事は、主菜・副菜共に加水ゼロ式調理法を導入しました。料理の水分量により粥ゼリーの添加量を変え、マニュアル化しました。
・主菜にはプロテインパウダーを添加し、たんぱく質強化を図りました。 ・汁のゼリーやとろみは具無しだったものを、具ありでゼリー(コード3)にしたり、とろみ(コード2)をつけたりして提供しました。

嚥下調整食1食のビフォーアフターの写真と栄養価

嚥下調整食(学会分類コード3)一食のビフォーアフターの写真と栄養価(例)

栄養強化比較表
項目 従来 栄養強化後
画像
栄養強化の工夫点 ONSの利用 粥ゼリーはMCTオイルと粉飴を添加
ミートローフ風にはプロテイン粉末を追加
付け合わせにはマヨネーズを添える
エネルギー (kcal) 479 586
たんぱく質 (g) 18.4 23.5
脂質 (g) 18.3 24.6
炭水化物 (g) 62.7 66.8
塩分 (g) 1.0 1.2
1食平均食事重量 (g) 545 484

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