栄養強化嚥下調整食導入事例(新八千代病院)

医療法人社団永生会 新八千代病院

著者:大嶋 晶子

嚥下調整食提供数(1日あたり)

コード2相当:35食 コード3相当:45食 コード4相当:100食

きっかけ

当院では、学会分類の2-2相当として「ミキサー食」があります。

ミキサー食の問題点として、きざみ食(コード3相当)に加水して調整するため、容量が増え味が薄くなることから残食が多い傾向にありました。ミキサー食の対象者は、経口摂取移行途中や高齢者が多く、栄養量の確保が課題となっていました。

そこで、「加水ゼロ式調理法」導入による栄養強化嚥下調整食を検討しました。

体制づくり

初めに、調理職員対象に管理栄養士による嚥下調整食学会分類の研修会を2回、株)フードケア在川氏による「加水ゼロ式調理法」のオンライン研修会を実施しました。調理器具はブリクサーのみであったため、業務用ミキサーを購入しました。人員配置や工程変化は調理職員への大きな負担となるため、できる限り変化の少ない、負担が増えないことに配慮して計画を立てました。

献立構成は、ほかの食種と分けることによりミキサー食へ向いている食品を選択し、「おいしいものだけ」「食べきれる量で」を目標に新たなサイクルを作りました。

食材で支障のないものは冷凍食品を利用することで下処理での煩雑さを、人手の少ない朝食時のアウトソーシングの採用で業務量を軽減することなどで、栄養量の確保と調理職員への理解を得ることができました。最終目標は、クックチル・クックフリーズによる計画調理化です。

推しポイント

1)主食量の減量とエネルギーアップ

 基準量230gのミキサー粥を150gに減らしMCTオイル小さじ1杯をプラス、減らした80gは主菜と副菜へ利用

2)ミキサー専用メニューで下処理・調理が簡素化

 食種が増える負担を、冷凍野菜や加工済み食品の採用で軽減
 下処理から調理までホテルパン1つで厨房をパススルー

3)標準化

 だし汁や水による加水ととろみ調整食品の組み合わせに比べ、ミキサー粥を加えるだけの手順により、調理の標準化が可能

4)栄養量の確保

 「全体量が減る」「味が安定する」ことで残食が減る
 完食できることで喫食者のモチベーションもアップ

5)栄養強化に挑戦

 栄養補助食品追加による更なる栄養強化が可能に

<苦労したこと>

新しい方法への理解と周知には少し時間がかかりました。加水ゼロ式調理法の手法は、料理長が写真入り手順書を作成・掲示し工夫してくれました。

<喫食者と介護者の反応>

食べにくい物性がなくなり、おいしくなりました。ほとんど食べきれます。

食事時間も短縮し喫食者の負担が減りました。

主食230gが食べきれないので150gに減量しONSを付加していた方は、ONSなしでも栄養量を充足できるようになりました。ONSの使用数が減り、食材費にも反映されています。

体重は導入前後で比較することができませんでしたが、喫食量は10割の方が増えていました。

嚥下調整食のBefore After

メニュー:ミキサー粥・鶏肉の煮物(大根・しめじ)・甘辛胡麻和え(ブロッコリ・さつま芋)・味噌汁(卵・玉ねぎ)

 BeforeAfter
熱量(kcal)480506
たんぱく質(g)24.123.5
脂質(g)9.19.0
糖質(g)72.471.1
食塩相当量(g)2.82.6

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