上島順子(NTT東日本関東病院)
摂食嚥下障害のある患者さんが回復し、生活の質(QOL)を向上させるためには、適切な栄養サポートが欠かせません。
摂食嚥下機能が低下すると、十分な食事摂取が難しくなり、栄養不良や体力の低下を招きやすくなります。そこで、嚥下調整食にエネルギーやたんぱく質を強化して提供することで、身体機能の維持やADL(日常生活動作)の改善が期待できます。我々は、栄養強化された嚥下調整食を活用した介入研究において、摂取エネルギー量の増加やADLの有意な改善などの成果も報告しました¹。

また、単に栄養補助食品を追加するだけではなく、「おいしく、楽しく食べられる食事」を提供するための工夫も大切です。例えば、食形態や見た目、味付けだけでなく、彩りや香り、温度管理にも気を配り、食事が患者さんの楽しみの一つとなるよう心がけることが求められます。
加えて、一人ひとりの嚥下機能や栄養状態に合わせた個別の栄養介入と、多職種が連携した専門的なサポート体制を整えることで、栄養状態の安定やリハビリテーション効果の向上が期待されます。これにより、患者のQOLを高め、より自立した生活を支援することが可能となります。
施設で提供する嚥下調整食の質を高め、嚥下障害患者さんへの栄養サポートをさらに充実させていくことの重要性を改めて認識する必要があります。
参考文献
1. Ueshima J, et al. J Am Geriatr Soc. 2025; doi: 10.1111/jgs.19468