著者:上島順子(NTT東日本関東病院)
嚥下障害のある方にとって、嚥下調整食は安全に食事摂取するための重要な手段です。
しかし一方で、嚥下調整食は低栄養のリスクを高める要因となることが指摘されています1。食感の調整によって見た目や味の満足度が下がり、食欲が減退しやすくなるだけでなく、調理時の加水によって食事の量が増え、食べきれずに残してしまうケースも少なくありません。その結果、必要なエネルギーやたんぱく質の摂取量が不十分となり、筋肉量や体力の低下、さらにはリハビリ効果の減少にもつながります。実際に急性期病院での調査では、嚥下調整食の提供エネルギー量が一般食に比べて少ないことが報告されています2。

また、嚥下調整食はエネルギーやたんぱく質だけでなく、ビタミンやミネラルなどの他の栄養素も不足しがちであり、全体的な栄養量の低下が問題となっています。特に高齢の嚥下障害患者では、エネルギー摂取が不足すると筋肉量の減少が加速し、身体機能や生活の質の著しい低下を招く可能性があるため、より一層の注意が必要です。
今後は、安全性だけでなく、栄養面にも十分に配慮した嚥下調整食の提供と、栄養強化による低栄養対策を積極的に進めていくことが求められています。
参考文献
- Ueshima J, et al. J Am Med Dir Assoc. 2022;23(10):1676-1682.
- 上島他.日摂食嚥下リハ会誌. 2024;28(2):67-78.