著者:白井祐佳(浜松医科大学医学部附属病院栄養部)
嚥下機能が低下すると、食事のみで必要な栄養量を確保することが難しくなる場合があります。嚥下調整食を工夫してもなお、エネルギーやたんぱく質が目標量に届かないケースは少なくありません。こうした状況で最初に検討すべき栄養療法が、経口栄養補助食品(ONS:Oral Nutritional Supplements)です[1]。
ONSを嚥下障害患者に提供する際には、「栄養価」と「形態」の両面から選択することが重要です。栄養価の観点では、少量で高いエネルギー・たんぱく質を摂取できる製品が適しています。高エネルギー・高たんぱくONSの摂取は、低栄養を有する脳卒中患者においてADLや歩行能力の改善と関連することが報告されており[2]、栄養支援が機能回復にも影響し得ることが示唆されています。
形態の観点では、患者の嚥下機能に合わせた製品選択が求められます。粘度が薄すぎる液体は誤嚥リスクを高める可能性があり、ゼリー型やとろみドリンク型など適切な形態のONSを選ぶことが重要です。実際に、粘度を調整した高たんぱく栄養補助食品が嚥下障害のある高齢者の嚥下安全性の改善に寄与する可能性を示した報告もあります[3]。
また、ONSを「間食」として活用することも有効な戦略の一つです。ESPENの高齢者ガイドラインでは、摂取栄養量を増やすための手段として間食摂取を推奨しています[4]。嚥下障害を有する高齢者はアイスクリームなど冷たく甘い食品を好む傾向が報告されています[5]。こうした嗜好を考慮してONSを選定し、間食として提供することが、継続的な栄養補給の一助となり得ます。
図1. 嚥下障害患者に対するONS活用の実践サイクル

一方で、ONSの適正使用には課題も残ります。トルコの医療従事者を対象にONSの適応・投与・モニタリングに関する知識を評価した調査では、嚥下障害領域でのONS使用に関する知識不足が特に顕著でした[6]。この結果は、ONSを日常的に扱う我々医療従事者が、その適正使用について改めて理解を深める必要性を示しているといえるでしょう。目的を明確にしないまま漠然とONSを提供することは、経済的負担につながります。一方、低栄養リスク患者への早期介入は費用対効果が高いとされています[1]。その効果を最大限に引き出すには、摂取量の定期的なモニタリングと、患者の状態に応じた内容の調整が不可欠です。
ONSは嚥下障害患者の食事療法を補完する有力なツールですが、その真価は「適切な患者に、適切な製品を、適切なタイミングで」提供することで初めて発揮されます。JWINDは、摂食嚥下障害患者への栄養管理の質向上に向け、引き続きエビデンスに基づく情報発信と実践支援を続けてまいります。
参考文献
[1] Correia MITD, Castro M, Toledo DO, et al. Nutrition Therapy Cost-Effectiveness Model Indicating How Nutrition May Contribute to the Efficiency and Financial Sustainability of the Health Systems. JPEN J Parenter Enteral Nutr. 2021;45:1542-50.
[2] Rabadi MH, Coar PL, Lukin M, et al. Intensive nutritional supplements can improve outcomes in stroke rehabilitation. Neurology. 2008;71:1856-61.
[3] Mongkolsucharitkul P, Pinsawas B, Watcharachaisoponsiri T, et al. Evaluating swallowing capacity in older adults with dysphagia: high protein, low carbohydrate smoothie formulas versus commercial formula. BMC Geriatr. 2025;25:456.
[4] Volkert D, Beck AM, Cederholm T, et al. ESPEN guideline on clinical nutrition and hydration in geriatrics. Clin Nutr. 2019;38:10-47.
[5] Okkels SL, Saxosen M, Bügel S, et al. Acceptance of texture-modified in-between-meals among old adults with dysphagia. Clin Nutr ESPEN. 2018;25:126-32.
[6] Bahat G, Erdoğan T, Pınar E, et al. Oral nutritional supplements in clinical nutrition: Insights into healthcare professionals’ knowledge and practices. Nutrition. 2026;144:113059.


